ポルシェ パナメーラS E-ハイブリッド(971型)で、ハイブリッドシステム故障によりEVモードにならないとのことでご入庫頂きました。ロードテストにより確認したところ、全くEVモードにならず常にエンジンが起動しっぱなしとなってしまっています。早速診断機で原因を確認すると、「P055600:ブレーキブースター信号異常」を検出しています。

また、エラーを消去すると一時的にはEVモードが使えるようになりますが、ブレーキを何度か踏むとEVモードにならなくなってしまいます。
ブレーキブースター系統の故障で最も多いのはマスターバックやバキューム配管の亀裂による負圧漏れです。この段階でマスターバックや配管が原因と判断されがちなのですが故障探求を進めます。
現代の車はテスターでセンサーの値をリアルタイムでモニタできますので、バキュームラインの圧力センサーとブレーキ踏力等の値をモニタし、負圧の保持およびブレーキ関係の信号が正常かを確認します。
ブレーキブースター圧力の値をモニタしながらブレーキを操作すると、エンジンが掛かっている時は負圧を発生できていますが、EVモードの時(=エンジンが止まっている時)には負圧が発生できていません。また、EVモードではブレーキを踏む度に負圧が減少し、ある値を越えると故障コードP056600が立って、それ以降EVモードに入らなくなります。

ここでパナメーラハイブリッドのブレーキブーストシステムについて説明します(なおこれはカイエンハイブリッドでも同様です)。
この車のブレーキアシストは、多くのガソリン車で採用されるインテークマニホールド負圧を利用するのではなく、カムシャフトの回転力で機械式バキュームポンプを回して負圧を作って、その負圧でブレーキ踏力をアシストしています。しかしこの機械式バキュームポンプはエンジンが動いている時にしか動作しないため、EVモードの時には負圧が得られません。そのためパナメーラ ハイブリッドでは、機械式バキュームポンプに加えて電動バキュームポンプを装備しています。
上記のシステムを勘案すると、今回起きている事象はEVモード用の電動バキュームポンプが動作していない状態であると判断できます。まず、電動バキュームポンプのヒューズを確認したところ、切れてしまっています。

試しにヒューズを交換すると、即座にまた切れてしまいます。従ってヒューズの先でショートが発生しています。電動ポンプ内部でショートしているかを確認するためポンプのコネクタを外すと、ヒューズは切れることが無くなりました。従って、電動ポンプ内部でショートが発生していることが分かりましたので交換します。
電動バキュームポンプの新品は約20万円と非常に高額です。一方で故障率がそれほど高い部品ではないので、お客様と相談し中古品を使用することとしました。

海外からの取り寄せとなったため時間が掛かりましたが無事良品を入手できました。早速交換したところ、無事にEVモード時にも負圧が発生するようになりました。

これでハイブリッドシステム故障が発生することは無くなり、無事に修理が完了しました。ポルシェのハイブリッドシステム故障は様々な原因で発生します。今回のような故障であれば大掛かりな修理にはなりません。ハイブリッド故障が発生した場合、高額修理になってしまうケースもありますが、まずはご相談頂ければと思います。この度はご入庫誠にありがとうございました。
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